離婚の流れ

離婚手続きには、3つの段階があります。

第1段階 相手方との交渉・合意 又は 決裂

 行政書士が関与できるのは、この段階の合意するケースです。

 相手方と離婚することや財産の分与、子供の養育などについて合意されていれば、行政書士が離婚協議書の作成をお手伝いできます。行政書士はこの段階で円滑に離婚協議書が作成されるよう双方の意見を伺って合意がなされるよう努力します。

 離婚条件についてお互いが合意できた場合、合意された離婚条件で離婚することになり、その離婚条件は、離婚協議書や公正証書にしておくことになります。

 ですが、上記について合意がなされない場合、弁護士に依頼することになるでしょう。

 弁護士は、離婚条件(親権や財産分与など)について、相手方と協議を行います。そして、先と同様に離婚条件について合意できた場合、その離婚条件で離婚することになり、離婚協議書や公正証書の作成に移ります。この段階では弁護士も行政書士もやることは同じですが、「こじれた」とたん、行政書士は退場となります。

第2段階 離婚調停

 交渉で合意に至らなかった場合には、次に「離婚調停」を申し立てることになります。離婚調停(夫婦関係調整調停)とは、家庭裁判所で行う、離婚に関しての話し合いの手続きです。

 ここからは、弁護士が対応します。(行政書士は調停、裁判には関与できませんので。)双方が弁護士を立てることになります。双方が別々の弁護士に依頼しますし、双方それぞれが依頼した弁護士に弁護士報酬を支払います。

 家庭裁判所で調停委員を介して、相手方に言い分を伝え、相手方からの言い分を伝え聞きます。当事者本人が家庭裁判所に出向きます。

 離婚調停では、親権者のこと、親権者とならない親と子どもの面会交流のこと、養育費のこと、財産分与や年金分割のこと、慰謝料などの離婚条件についても話し合うことができます。

 この段階では、双方が弁護士に依頼することが多いです。依頼すると、弁護士は依頼者本人の代理人となります。 本人が希望すれば、弁護士は基本的に本人と共に調停期日に同席し、調停委員からの聞き取りに対応します。本人の代わりに、弁護士が調停委員に対して本人の希望や意見を伝えることができます。

 調停で当事者双方が離婚および離婚条件に合意すれば、調停成立となります。その後、役所に対して離婚届を提出します。調停離婚です。期間的には約3ヶ月~半年程度かかります。

 相手方が調停に出席しなかったり、出席しても離婚に応じない、離婚条件が整わないような場合は、調停は不成立となり、終了します。この段階ではまだ離婚できていません。

(3)離婚訴訟
 離婚調停が不成立に終わってしまった場合には、次は離婚訴訟において、離婚を請求します。なお、離婚訴訟は、原則として、離婚調停を経た後でなければ、提起することができません。

裁判上で離婚が認められるための要件は、民法に定められています。

(裁判上の離婚)
第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

上記の「離婚原因」を、弁護士(離婚を求める側)が立証していきます。期間的には半年以上かかります。

離婚問題に関する弁護士と行政書士の違い

1 機能の違い

 行政書士は、離婚協議書の作成や、そのための相談を行うことができます。しかし、相手方との交渉権限を持ちませんので、離婚協議書にどのような内容を記載するかということについては、ご自身で、相手方と話し合わなければなりません。自力で合意を形成しなけなければならないということです。

 ですので、行政書士の扱う段階は第1段階のものに限定されます。合意されたか、あるいは合意されそうな案件を受けて、相談しながら離婚協議書を作成するのが行政書士の一般的なスタイルです。行政書士は、法律的な判断が含まれる離婚協議書の作成や、そのための法律相談ができないのです。

 合意が形成できなければ、自動的に弁護士に依頼することになります。弁護士は、離婚調停、離婚訴訟のいずれについても書類作成、期日への出頭を含む法律事務に関する代理行為全般を行うことができます。

2 費用の違い

 行政書士は法律的な判断のためではない相談を受けたり離婚協議書の作成なら行えます。容易な業務ですから、料金も1件あたり3万円ぐらいから受任する行政書士がいるようです。諸々の経費も合わせるとせいぜい15~20万円程度かと思います。

 これに対して弁護士費用は、事案集結まで長期にわたる可能性があり、法律的な判断や裁判所での代理行為などもありますから・・・多分、調停までの段階で40-50万円程度、訴訟においては、50-100万円程度かかるのではないでしょうか。案件にかかる費用の総額というのは、さまざまなオプションが付く可能性があって、だから始める前にはわからなくて、終わったときに「ン○○万円です」となることが多いようです。定額ではないんですね。

実績といいますか・・・

「こじれた」案件の相談を受けたことがありますが、行政書士の職権を超えていましたので弁護士をご紹介しました。

この業務を行うといつも思うのが、「痛みのない離婚はない」ということです。